2017年2月16日
「可能な限り神経を温存」
下北沢井上デンタルクリニックのむし歯治療の特徴としてまず大きく上げられるのは、
歯の神経を可能な限り温存し、できるだけ歯を長く使って頂ける環境を治療の中で作るということです。
歯の神経は、歯の中央部に存在するグミ状の弾力のある組織で
硬い歯の中で空洞になっている部分に存在します。
人間の体の脳と同じように、歯にとっては一番大切な部分で
歯を守る重要なセンサーの役目をしていますので、治療の中で処理をするとその役目がなくなりますので
できるだけ神経を温存し残したほうが歯を長く健康的に使っていくことができます。
ただ、様々な歯科医療技術の発達により、神経をとる≠すぐに抜歯とはならないので
ご安心ください。
では、「神経をとる」ことで歯が脆くなるとか、むし歯になりやすくなるとか巷では言われておりますが、
歯の神経を取ることによって一体何が変化するのでしょうか?
実際のところ、1992年のSedgley先生の論文より
という結果になっており、統計学的に有意差がないので
歯の神経をとっても歯は脆くならない
ということです。また、神経を取ることで歯の栄養がなくなり枯れ木のような状態になるということもありません。
(ただ、神経を処理しなくてはならないくらいのむし歯の大きさがそこに存在するということ自体、その後の歯の寿命を縮めるだけの十分なリスクがあることは間違いありません。)
神経をとることにより歯に起こる変化として挙げるとするならば
Randow&Glantz先生が報告しているように
噛んだ時に痛みとして感じる力が神経が残っている歯に比べ2.5倍以上の力を加えないとわからなくなっているため
必然的に神経をとった歯に負荷がかかりやすくなる
ということです。
その結果、長年の負担で、日常の診療でよく遭遇する歯根破折と言われる
歯の根っこが折れてしまう現象が起きやすくなり、患者様にとって一番避けたい抜歯に至ることになります。
これらの変化は長い年月を経て起こりますので
先程お伝えしたように
神経をとる≠すぐ抜歯という関係ではありませんし、
もちろん当院でも必要があれば状況により歯を長く使っていただくために
神経の処理をご提案することもございます。
また、神経を処置することには必ず医学的な必然性がありますので
当院でも100%の確率で神経を温存できるわけでもありません。
当院ではできるだけ神経を温存できる可能性を高めるために
①う蝕検知液の使用
②5倍速コントラアングルの使用
③拡大ルーペの使用
④歯を削る際、可能な限り小さいバーの標準使用
⑤麻酔下での無痛治療
⑥MTAセメントの使用
⑦神経に刺激の少ない保護材の使用
など行っており、これらの具体的なご説明は
次回以降していきたいと思います。
長文になってしまいましたが
御一読ありがとうございました。