むし歯治療

Cavity

歯の喪失によって失うもの

歯の喪失によって失うもの

歯の喪失によって失うもの

日本人の寿命は、男性が約81歳、女性が約87歳です。これに比べて、歯の寿命はどうでしょう。厚労省が発表している全国規模の調査によると、平均すると50歳を過ぎたあたりから日本人は加速度的に歯を失う現実に直面し、寿命を全うする頃には半分以上の歯を失うことになります。

それに伴い多くの方が知らず知らずのうちに、歯科医院の受診回数の増加による大切な人生の時間的・機会的な損失や、医療費負担の上昇による経済的損失はもちろんのこと、咀嚼効率の低下から起こる栄養摂取バランスの崩壊による全身的な大きなご病気の発症率の上昇などに見舞われるようになります。

歯の喪失によって失うものの多くは、皆様が普段の生活の中で大切にされている普遍的な価値基準のほぼ全てといっても過言ではありません。

歯を失ってしまう原因の1つが「むし歯をくり返すこと」歯を失ってしまう原因の1つが「むし歯をくり返すこと」

歯を失ってしまう原因の1つが
「むし歯をくり返すこと」

多くの方が誤解されていることの一つに、
「一度治療したところはむし歯になることがない」ということがあります。


多くの歯科医院で一般的に行っている、削って埋める治療と単発のクリーニングと歯磨き指導では、歯の寿命を延ばし再発を防ぐ効果がほとんどないことを多くの歯科医師は知っています。むし歯を回避するために定期的にメンテナンスで通っているにも関わらず、その都度むし歯の指摘を受けられてしまう方も少なくないと思います。それはそもそも口腔内がむし歯になりやすい素地を根本的に解決できていないことに起因しています。

歯は構造的に治療をくり返すたびにエナメル質が少なくなっていくので、強度が失われ、初めての治療より数回目の治療の方が当然持ちも悪くなり、その後の再治療までの時間も圧倒的に短くなります。

歯を失ってしまう原因の1つが「むし歯をくり返すこと」
下北沢井上デンタルクリニックでは、アメリカの多くの歯学部教育で採用されているむし歯予防管理システムの「CAMBRA」に準じてむし歯になりやすい口腔内の素地を根本的に改善し、「MIの概念に沿った治療」とできるだけ「歯の神経の温存」をすることでむし歯治療の繰り返しを減らしていくことに注力することを特徴としています。

歯を失ってしまう原因の1つが「むし歯をくり返すこと」

できるだけ歯を削らない
治療方法「MI」

できるだけ歯を削らない治療方法「MI」

MIとは「Minimal Intervention(最小の侵襲)」の略で、「削る範囲を最小限に抑える」ことを意味しています。つまり、治療に必要な最低限の箇所のみを削り、歯へのダメージを可能な限り抑える治療方針のことです。
歯は1度削ってしまうと、髪の毛のように再生することはありません。元に戻ることはないのです。MI治療では、治す必要がある部分のみを処置するので、生まれ持った歯をきれいなまま残すことができます。さらに、治療の際の歯へのダメージをできるだけ与えないことにもつながります。
ただし、むし歯がかなり進行してしまうと、MI治療が行えないケースがあります。できるだけ削らなくて済むような段階で治療を行うためにも、定期的な診察や検診を受けることが大切です。

MI治療をより効果的に行うための3つの特徴

検知薬

特徴①う蝕検知液の使用

う蝕とは専門用語でむし歯のことをいうため、「むし歯検知薬」ともよばれています。この検知薬を歯に塗ると、むし歯の部分だけを赤く染めることができる特殊な薬剤です。歯の健康な部分とむし歯組織とをはっきりと区別でき、むし歯の位置や大きさを的確に把握することが可能になるので、歯の健康な部分を削りすぎてしまうことを防止できます。

検知薬イメージ画像 (日本歯科薬品株式会社のHPより抜粋)

むし歯治療で大切なことは、健康な歯を削らないようにして悪いところのみを取り残しがないように選択的に削ることにあります。

文字にするとすごく簡単なことのように思えますが、実際に細菌感染している部分がどこまで波及しているかは 我々歯科医師にとって経験上ある程度はわかりますが、正確には確認できません。
むし歯を発生させる細菌のサイズは平均3µm前後ですので、見ただけでわからないのです。

当院では、この薬剤をどんなに大きなむし歯でも小さなむし歯でも前歯でも奥歯でも100%使用し、しっかり取り残しがなく赤く染まっている部分がないかを逐一口腔内カメラで撮影し、患者様と一緒にその場で必ず確認してもらいます。
またデータとして記録にも残しております。

むし歯治療の特徴

この薬剤が実用化されるまでは、むし歯治療は臨床感覚、つまり歯科医師の削っている感覚で治療がされていました。

しかし、この方法だと、10人の先生がいれば10人の感覚がありますので、当然取り残しや削りすぎもでて、かなりのズレが生じていることがわかります。

治療を受けられる際に、歯科治療の基本であるむし歯をどのように判別して除去するかは、歯科医院によって特徴がありますので、HP等でしっかり確認された方がよいと思います。

最後にくり返しになりますが、当院ではむし歯治療の大原則である、「健康な歯を削らないようにして悪い部分のみを除去する」ためにこの染め出し液を標準治療として使用し、できるだけ皆様の大切な歯を犠牲にしないようにし、歯を長く残せる可能性を高められるようにしています。

拡大鏡

特徴②キーラ社拡大ルーペの標準仕様

下北沢井上デンタルクリニックでは、必要最小限の歯への負担で大きな効果を得られるように歯科用拡大ルーペ(キーラ社製5.5倍)をどんな治療でも使用しております。
人間は意思決定をする際に、実に87%を視覚の情報に頼っているといわれています。
“見えているのか”“見えていないのか”“見ているつもりなのか”、この小さな違いが大きな治療結果を生む可能性があると下北沢井上デンタルクリニックは考えています。
同じ5.5倍のルーペでも、メーカーによって見え方は全く異なります。

ではこれを使用して実際に歯を見るとこのような感じです。

拡大鏡

拡大される前の左側の写真だと歯と歯の間が黒くなっているので一見するとむし歯のように見えますが、拡大すると歯に穴が開いてるわけではなく着色しているだけとわかるので歯を削る必要がないと診断できます。
本当に削る必要があるか、ないかも拡大しながら歯を観察すると様々な状況が確認できますので、肉眼で見るよりもはるかに的確に判断できます。

「肉眼では到達できない治療レベルの提供」
これも下北沢井上デンタルクリニックの大切にしているところです。
むし歯の大きい小さいにかかわらず、すべての患者様にこの拡大ルーペを用いて診療し、皆様の大切な歯を少しでも長く使って頂けるよう取り組んでいます。

麻酔下での無痛治療

特徴③麻酔で可能な限り痛みを抑えた治療

皆様が歯科医院を敬遠される大きな理由として、治療時の痛みや恐怖、過去の痛い苦い経験がかなりの大きなウェイトを占めるのではないでしょうか?

むし歯治療の多くは、ほんの1mm単位で処置をする必要がほとんどですので、術中は自分の呼吸でも体が揺れ手元がぶれるため、息を止めて歯を削るようにしています。また痛みで患者様が動かれたりすると健康な部分まで削ってしまうリスクもあるので、しっかり麻酔が効いた状態で処置を受けていただくことは非常に重要です。

ですので当院の麻酔は、できるだけ患者様に痛みなく麻酔を受けて頂けるよう以下のような取り組みをしております。

むし歯治療の特徴

当院で使用している表面麻酔「ビーゾカイン歯科用ゼリー20%」

① 表面麻酔の時間を最低2分以上必ず設ける

治療中の痛みは麻酔をすることでコントロールできるようになりますが、歯は硬い組織なので、直接歯に麻酔薬を塗ったりして麻酔をすることができません。
そのため、歯肉に麻酔薬を注射し歯まで浸透させる方法が一般的にとられます。

ただ、点滴や採血をする際に針を刺す時に「チクッ」とするのと同じようにどうしても歯肉に針を入れる時も同じようになりますので、多くの患者様がこの「チクッ」が苦手なのだと思います。

そのため当院ではできるだけその「チクッ」が痛くないように、針を刺す場所に表面麻酔をしてその痛みの緩和を図ります。

ここで重要なことが2つあります。
1つ目は、表面麻酔をした後に最低でも2分以上の時間をあけ、十分に表面麻酔の時間を確保するということです。
予約を重ねたり、次の患者様が待合室で待っているような状況だとこの時間を短縮してすぐに麻酔をしてしまう歯科医院がありますが、それだと表面麻酔の効果が現れていない可能性がありますので当院では最低でも2分以上の時間を確保後麻酔をするようにしています。(製造元の説明では1分30秒で表面麻酔の効果が現れるとしていますが当院ではそれよりも長い時間をかけて表面麻酔をします。)

2つ目は、表面麻酔をする場所を十分に乾燥させてからお薬をつけるということです。
お口の中のすべての場所は唾液で常に湿っている状態です。
濡れているところに表面麻酔のお薬を塗っても水分と混じりお薬の濃度が著しく低下します。
そのため当院ではカピカピに粘膜を乾燥させ表面麻酔の効果を十分に発揮させます。

歯科で一番細い針を使用

② 歯科で一番細い針を使用

下北沢井上デンタルクリニックで麻酔時に使用する針は直径0.23mmです。
非常に細いので、歯肉を通過する際の抵抗値も、以前のものより15%以上低下しております。

これまで(33ゲージ)の針との違い

サイズ 針寸法 刺通抵抗値
33G(従来 0.26mm 0.445N
35G(現在) 0.23mm 0.375N
むし歯治療の特徴

当院で使用している電動麻酔「日本歯科薬品会社製 アネジェクトⅡ」

③ 麻酔液注入時の痛みを軽減

麻酔をする際の痛みとして、最初にお伝えした針を刺す際の痛みと、もう一つ麻酔液を入れる時の痛みがあります。
麻酔液は約1.5ml前後使用する必要があるので、この量が歯肉に入っていく際の痛みをいかに軽減するかがもう一つのポイントになります。
当院では歯肉のやわらかさを自動で感知し、一定の適切な圧力で麻酔ができる先進的な電動麻酔器をご用意しています。

ただ、本当に繊細な麻酔液注入の圧力のコントロールは従来通り手で行う方が優れている場合もあるので、そこは麻酔をする場所や歯肉の厚みなどで判断しております。

むし歯治療の特徴

④ 痛みを感じにくいテクニック

上記でお伝えしたような方法で同じように麻酔をしても、やはり痛みをお感じになられる場合もございます。
ただ、できるだけ痛みを感じないように麻酔をするうえで重要なことは、実は以下に述べるテクニックの部分だったりします。
それは「針を刺す場所」と「刺す角度」です。
お口の中の歯肉には、皮膚と同じで厚い部分もあれば薄い部分もあり、その中でも痛点と呼ばれる痛みを感じるセンサーが密集している部分もあればそうでない部分もありますので、できるだけ痛みを感じにくい場所に麻酔をするようにしております。
また、針の先端は斜めにカットされており、その角度を歯肉にどのようにあてるかも大きなポイントになりますので薄い粘膜をめがけて刺入します。

麻酔をしたのに痛い場合の処置

麻酔の薬にも効きやすさや、効いている時間、治療する状態により効き目に個人差があります。

●すでに痛みのある状態からの麻酔
●腫れや炎症の強い場所の麻酔
●膿を持っている場所への麻酔
●下の顎の奥歯の治療の麻酔

一番大切なのは、ありきたりですが「痛みの出る前に早めに処置」が重要になります。
どうしても麻酔が効きづらい時には

①麻酔を追加する
②十分時間をおいてから処置を開始する
③一旦治療を中断し、腫れや炎症が治まるまで飲み薬による治療を行う
④少しだけ我慢していただき、短時間で処置を終わらせる

などの対応をしておりますが、ほとんどの場合は①と②で解決します。その都度患者様に説明し相談しながら決めていきます。

可能な限り神経を温存

下北沢井上デンタルクリニックのむし歯治療の特徴としてまず大きく上げられるのは歯の神経を可能な限り温存し、できるだけ歯を長く使って頂ける環境を治療の中で作るということです。

歯の神経は、歯の中央部に存在するグミ状の弾力のある組織で硬い歯の中で空洞になっている部分に存在します。
人間の脳と同じように、歯にとっては一番大切な部分で歯を守る重要なセンサーの役目をしていますので、治療の中で処理をするとその役目がなくなってしまいます。できるだけ神経を温存し残したほうが歯を長く健康的に使っていくことができます。
ただ、様々な歯科医療技術の発達により、「神経をとる≠すぐに抜歯」とはならないのでご安心ください。

神経を温存するための
4つの特徴

直径0.6mmドリルの標準仕様

特徴①直径0.6mmドリルの標準仕様

人体の構造の中で一番硬い歯を削る際に用いるドリルには大きなものから小さなものまで様々あります。

直径0.6mmドリルの標準仕様

左からApple Pencil、0.6mmの極細ドリル、定規

当然ですが、大きなドリルを使用すると歯を短時間で大きく削ることができますが、当院ではできるだけ健康な歯を削らないようにすることに重きを置いてむし歯治療をしているので、直径0.6mmという極細のドリルを標準使用しております。

肉眼だとほとんど小さい点としか見えないのですが、先端の色が少し変わっている部分に粒子状の細かいダイヤモンドが焼き付けてあり、その部分でしか削れないようになっております。
拡大下でこのドリルを使い、しっかりむし歯などの悪いところを確認しながら取ることができますので健康な歯まで削るリスクを減らすことが可能になりました。

(一番左は、最近購入したApple Pencilで一緒に撮ると大きさが全然違いますね。)

神経までの距離がギリギリの時などは特にこのような従来のものに比べ細いドリルが役に立ちます。

ただ、難点として、小さいドリルなのでむし歯を除去するのにかなり時間がかかることが挙げられます。
患者様にはいつも治療時間がかかってしまい申し訳ありませんが、これもできるだけ神経を温存できる可能性を高めるための一つとご理解いただければと思います。

一度失ってしまった歯はもう二度と戻ってきませんので、歯科治療の基本であるむし歯治療をどのようにするかは非常に重要になってくると思います。

検知薬

特徴②MTA

「MTA覆髄治療」や「歯髄保存治療」ともよばれ、重度のむし歯に対して行われる治療です。歯の神経(歯髄)までむし歯が進行してしまうと、歯を大きく削ったうえに歯髄を取り除くことがあります。しかし、歯髄を抜いてしまうと、歯の寿命が短くなって抜歯をしなければいけなくなるリスクが大きくなります。
MTAでは、歯髄付近まで進んでしまったむし歯を丁寧に削り、歯髄を傷つけないように洗浄・殺菌してから「MTAセメント」という歯科材で歯髄を覆います。すると、そこに骨や象牙質を作る細胞が付着して増殖し、数ヶ月経過すると新しい象牙質によって歯髄が保護されるようになります。
MTAは、歯の神経を残して寿命を延ばせる可能性を高めることができる治療法なのです。

裏層材の使用

特徴③裏層材の使用

「裏層(りそう)」とは、白い歯科材で詰め物や被せ物を装着するセラミック治療の際に、セラミックの修復物と歯の間に1つの層を作ることです。裏層材は象牙質に近い強度と優れた断熱性を持ち、象牙質に対する接着性がよいので、露出してしまいそうな歯髄を守るのに適した素材です。
これを修復物と歯の間に入れると、修復物の強度も上がり、知覚過敏なども抑えることにつながります。
見えないところではありますが、裏層材を使うことによって治療したところが長持ちし、歯の寿命にもよい影響があると考えられます。

むし歯治療の特徴

特徴④ 5倍速コントラアングルの使用

むし歯を削る際に、できるだけ神経を守るために健康な部分まで削りすぎないようにすることが大切です。人間の身体で一番硬くできている歯を削る際に使用する道具には「エアータービン」と「5倍速コントラアングル」と呼ばれている2つがあり、当院では開業以来ほぼ100%、むし歯の治療の時には「5倍速コントラアングル」を使用しています。

むし歯治療の特徴

この道具は、超精密に設計されており、

数百個のパーツによってこのように組み立てられております。

では、
一体この「歯を削る道具」と「神経を温存する可能性を高める」にはどのような関係があるのかでしょうか?

「歯を削る道具」は分速1万回転から30万回転までの間を高速に回転します。
このような超高速で回転すると、歯と削る道具の接する部分には「振動」と「摩擦熱」が発生し、歯や神経に少なからず負担をかけることになります。
歯の神経は熱に非常に弱いため、治療中に水が絶えず出るのはそのためですが、この「振動」と「摩擦熱」をいかにコントロールするかが、 繊細な組織である「神経」の温存には重要になってきます。

当院のむし歯の治療で使用している「5倍速コントラアングル」の主なメリットとしては、

・回転数を細かく調整できるので、切削量をコントロールしやすい
→神経ギリギリの数mm単位のきわどい治療には「エアータービン」にはできない超低速回転にすることができるので有効です。

・優れた静音性で患者様のストレスを軽減
→患者様にとってキーンというエアータービンの特有の音自体がストレスになります。

・軸ブレを起こしにくい(これが大きなメリットと考えています!)
→ミクロン単位の精密なギアで削る部分を回転させるので、軸ブレが少なく、むし歯で削った周りの部分にチッピングといわれる細かいヒビを人工的に作る可能性が少ないので、詰め物などを歯に付けた後もその境目の部分からむし歯になりにくくなります。

などが挙げられます。

ちなみに、この「5倍速コントラアングル」と「エアータービン」は見た目的には一般の方にはわかりづらく、唯一の違いとしては先程述べた削っている最中の音だと思います。
キーンという音(治療中は緊張されていてわかりにくいと思います)が聞こえてくればそれは「エアータービン」を使用していると思います。歯科医院によってはそもそも5倍速コントラアングルを置いていないところもありますので、患者様がご希望されても難しい場合もあります。

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